私の夫は、機械系のエンジニアとして働いている。
そんな夫が、最近資格試験に合格し、晴れて資格を取得した。
アメリカの国家資格で「プロフェッショナルエンジニア」というものがある。
これは機械系エンジニア界隈では有名で、全体の20%弱のエンジニアしか持っていないらしい。
この資格は、その名の通り
「エンジニアの分野において、専門的な知識を有する専門家」
とみなされるそうで
たとえば、図面の責任者として判を押せたりできるらしい。
これがなんやかんや重要らしく
自分でビジネスをやりたい場合などは、この資格が必要になるらしい。
自分でビジネスをしないにせよ、この資格を持っていると
給料アップや転職の際に有利になるとのこと。
この資格の話は、付き合いだした時から話は聞いていて
「資格取らないとなあ〜」と言いつつ、彼の勉強している姿を見たことがなかった。
どうやら、過去にこの試験を受けて落ちていたので
自信が無いのが目に見えてわかった。
私の夫は「ミシガンの湖から生まれたんかな?」と思うほど
穏やかでとても優しい性格をしている。
怒る時もあるけど、ぜーんぜん怖くない(笑)
そんな夫だが、彼には大きな弱点が一つあった。
それは
「自分のためにはなかなか頑張れない」というところ。
これまでの彼の人生を聞いていても
自分で夢や目標を持って、それに向かって努力をして
夢を叶えたり目標を達成するようなことがなかったそう。
大学での勉強でも
単位を取らないと卒業ができないから、卒業できないと就職できないから
仕事で頑張るのは、クビになりたくないから
というように
生きるための必要最低限のこと、はたまた強いられたことじゃないと
頑張れない性格だった。
自分のキャリアへの情熱もあまりなく
このまま毎日普通に仕事をして、ある程度のお金がもらえれば
それで満足みたいな感じ。
昇給昇格にもそこまで積極的ではなく
転職社会のアメリカで生まれ育ったとは考えられないほど
転職にも全く興味がなかった。
付き合って1年が経った頃から、結婚を前提に付き合う感じの雰囲気になった。
お互いの結婚観を話すようになり
「あんなことがしたいね、こんなことがしたいね」
と話すように。
ただ一つ。私の中で不安要素があった。
それは、お金について。
これはアメリカ人あるあるだが
アメリカ人は、ほっっっっんとに散財癖がある。
というか、お金の管理が苦手な人がめちゃくちゃ多く
後先考えずに、欲しいものややりたいことにお金を使うパターンはよく聞く話である。
私の夫は、まさにこのパターン。
自分の欲しいもの、やりたいことは惜しみもなく出てくる。
「じゃあ今の経済力でそれってできる?」という話を何度もした上で
「あなたの理想の生活を手に入れるには、プロフェッショナルエンジニアの資格は取らないといけないんじゃない?」
と何度も話をしてきた。
「分かった、勉強する」と言っては、1週間も経たずにストップ。
「面白くないからやりたくない」
「自分にはできない」
と言う始末。
ここからは色んなことがあった。
夫をやる気にさせるにはどうしたらいいのかと
それはもう、色んなアプローチをしてみた。
けど響かない。
色んなことがあったけど、最終的に
「これじゃあなたと結婚できないよ」という話になり
ことの重大さをやっと分かった夫。
これは後から聞いた話だが
「一回だけトライしてみよ。それでダメだったら、もう勉強しなくていいよ。」
と私が夫に言ったらしく(覚えてない。笑)
それでやる気になったらしい。
それから夫は、人が変わったように勉強し始めた。
平日は、毎日1〜2時間は勉強し
土日は、ほぼ半日勉強。
試験1ヶ月前は、仕事以外はほぼ勉強しているような感じ。
そのほかにも、試験勉強に関する情報を積極的に集めて
会社の人から話を聞いたり、ネットで情報を調べたり。
私も試験の内容については、全然わからないけど
問題の解き方や試験の戦略を一緒に考えたりもした。
勉強を本格的に始めてから4ヶ月後に1回目の試験。
この資格試験は、2段階あるので
資格を取得するには、2つの試験を合格しないといけないのだが
1つ目の試験をなんと一発合格。
本人的には全然自信が無かったらしく
よっぽど嬉しかったのか
合格がわかって、即行電話がかかってきた。
それから約半年間勉強を続けて
2つ目の試験。
「多分受かったと思う」と本人的にも手応えがあったらしく
2つ目の試験も一発で合格できた。
晴れてプロフェッショナルエンジニアの資格が取れた夫。
もともと夫は、どちらかと言うと聞き上手の方で
自分からベラベラ話すタイプでは無いのだが
よっぽど嬉しかったのか、話が止まらなかった。
そして、夫に
「僕をやる気にさせてくれてありがとう」
と何度も感謝され
「これで今の会社で昇給できるし、もっといい条件があれば転職だって自信もってできる」
「この資格があるから、自分でビジネスをやることだってできるんだ」
と目をキラキラさせながら言っていた。
そんな夫を見ながら
「そうそう。私はあなたのその顔を見たかったんだよ」と
心の中でぼそっとつぶやいた。
本音を言うと、私は夫の昇給やキャリアアップにはあまり興味がない。
私だって稼げる。それに、私は仕事が大好きなのもあって
金銭面で夫に全力で頼る気は、今のところ毛頭無い。
私が夫との結婚を決めた理由の一つ。
それは「彼にはまだまだ秘めた可能性がある」と思ったから。
その可能性を開花させるには
「夢を見ることの楽しさ」
「目標に向かって努力をすることの大切さ」
を伝える必要があると思った。
それらを通じて
「自分に自信を持って欲しい」
これが私の一番の願いだった。
私にとっては、夫が資格を取れたことよりも
自信に満ちあふれた夫を見れた方が嬉しい。
「自分を信じる力があればなんだってできる」
そんなことを夫から教えてもらったような気がした。
「自信」は人を輝かせる一番のファッションアイテム。
どれだけ良い服を着ても、どれだけオシャレをしても
「自信」を身にまとった人の輝きには勝てないと思う、今日この頃です。
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